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  • 執筆者の写真Virtual Girl Nem

VRにおけるファントムセンスとは?VR感覚の謎めいた世界を解明しよう


VRにおけるファントムセンスとは?VR感覚の謎めいた世界を解明しよう

🔎 この記事のお勧めポイント

VRと言えば視覚的インパクトがあるものの、触ったり感じたりすることができない、という感想が多く見受けられる中で、仮想世界内で活動していく内に温度の変化や触覚などを実際に感じたというVRユーザーも少なくありません。新しい学術的な発見に繋がり、神経科学分野で注目を集めているこの現象を、ねむと一緒に解明していきましょう。(VIVERSE編集チームより)


ソーシャルVR (メタバース) の普及に伴い、多くのVRユーザーが報告し話題となっている、"本来感じるはずのない感覚"「VR感覚(ファントムセンス)」とは一体何なのでしょうか? この記事ではその「定義」「どれくらいの人が感じているのか」「感じる感覚の種類にはどんなものがあるのか」そして現時点での「原理的な仮説」について考察します。

 

本格的な研究はこれからの分野ですが、脳がアバターの身体を実際の身体と誤認識する事によって起こると言われており、原理的には「クロスモーダル現象」「共感覚」など既存の認知心理学の言葉で説明できそうです。

 

脳がその知覚を感じているとしたら、もはやそれは「錯覚」では済まされないのではないでしょうか? VR時代に向けて、私達の脳はいったい何を感じはじめているのでしょうか?



VR感覚(ファントムセンス)の定義

 

本来視聴覚しか再現されないはずのVR体験中に、本来感じるはずの無いそれ以外の様々な感覚を擬似的に感じる現象全般を、俗に「VR感覚」や「ファントムセンス」と言います。

 

まだ本格的に研究されるのはこれからの分野で、現時点でその定義もまだはっきりと定まっているものではありません。

 


「VR感覚」と「ファントムセンス」の違い

 

「VR感覚」と「ファントムセンス」は一緒くたに同じ意味で使われることが多いですが、しいて言えば厳密には以下のような違いがあるようです。

 

VR感覚(VR Sense):

現在のVRは基本的に視聴覚の体験しか物理的には再現しないが、ユーザーがそれ以外の様々な感覚を擬似的に感じる現象全般のこと。「VR」(バーチャルリアリティ) に着目した表現で、ソーシャルVRユーザーが使い始めた言葉。

 

ファントムセンス(Phantom Sense):

幻肢に着目した表現。厳密にはVRだけのことではなく、欠損部位やVRアバターなど、物理的には存在しない (="幻の") 身体部位「幻肢」(Phantom Limb) の感覚を感じる現象全般のことを指す。欠損部位の痛みを感じる「幻肢痛」(Phantom Pain) などから来た言葉。

 


「VR感覚」の種類

 

ソーシャルVRプラットフォーム、特にVRChatユーザーの中で、何かしら「VR感覚」または「ファントムセンス」を感じたという人は少なくありません。実際にどのような感覚を体感したかについて、2023年にねむとミラが2000人ものソーシャルVRユーザーの回答を集めた大規模な調査を実施した結果、2つの現象にたどり着きました。


多くのユーザーがファントムセンスを経験している が、落下感 (71%) や触覚 (43%) は比較的感じやすい 一方で味覚 (8%) や匂い (17%) は感じづらいなど、 感覚の種類によって感じやすさに大きな違いがあります。

 

多くのユーザーがファントムセンスを経験している が、落下感 (71%) や触覚 (43%) は比較的感じやすい 一方で味覚 (8%) や匂い (17%) は感じづらいなど、 感覚の種類によって感じやすさに大きな違いがあります。


触覚は、顔 (67%) ・ 手 (41%)など視界に入りやすい アバターの部位ほど感じやすい傾向が見られます。

 

触覚は、顔 (67%) ・ 手 (41%)など視界に入りやすい アバターの部位ほど感じやすい傾向が見られます。

 

人によっては、人間の身体には存在しないアバターの「しっぽ」や「猫耳」などの触覚を感じる例も報告されました。


 

「VR感覚」の原理解明

 

1.   クロスモーダル現象

 

赤い色(視覚)からイチゴ味(味覚)を連想する、みたいな、別々の感覚が互いに影響を及ぼし合う現象を認知心理学で「クロスモーダル現象」と言います。

 

VR感覚 (ファントムセンス) はこれのVRによる視聴覚→アバターの皮膚感覚バージョンですね。

 

とかはVRユーザーでなくても起こるので、多かれ少なかれ誰しも持っている感覚なのではないかと思っています。

 

2.    共感覚(シナスタジア)

 

似たような現象に、共感覚(シナスタジア)というのもあります。「クロスモーダル現象」は経験によって誰にでも生じる現象に対して、「共感覚」は先天的にもっている感覚について使われることが多いようです。

 

実際に関連する脳の部位が反応していて、脳は本当にその感覚を感じているのですね。


共感覚の例を見ますと、ある人にとってアルファベットのAは赤で、ある人にとって数字の0は黒など、それぞれ特定の色を特定の文字に結びつける人が多いことがわかります。
共感覚の例を見ますと、ある人にとってアルファベットのAは赤で、ある人にとって数字の0は黒など、それぞれ特定の色を特定の文字に結びつける人が多いことがわかります。

共感覚の例を見ますと、ある人にとってアルファベットのAは赤で、ある人にとって数字の0は黒など、それぞれ特定の色を特定の文字に結びつける人が多いことがわかります。

 

要するに、ソーシャルVRにおける「VR感覚」または「ファントムセンス」は、認知心理学とテクノロジーの交互作用によって生まれた興味深い現象です。ユーザーがVR体験中に視覚や聴覚を超えるさまざまな感覚を体感したことは、我々人間が持つ知覚に関する知識を覆すポテンシャルさえあります。これだけ複雑な「VR感覚」と「ファントムセンス」の違いに目をつけ、さらに研究していけば、日々進化する没入感テクノロジーに人間の脳がどう反応するのかを垣間見ることができるでしょう。




 

✍️ バーチャル美少女ねむ/Nemについて


A picture of Virtual Girl Nem, Japanese VTuber (Virtual YouTuber), Writer, Singer.

VTuber / 作家 / メタバース文化エバンジェリスト「バーチャルでなりたい自分になる」人類の進化を企む美少女アイドル♪『メタバース進化論』でITエンジニア本大賞

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